2021.06.22
山梨から近況報告
山梨県立中央病院女性専門科 塚本路子先生の投稿です。
「富士には月見草がよく似合う」と太宰治が書いた御坂峠からの富士山(写真1)を横目に見ながら片道一時間ほど車を走らせて、自宅のある甲府から富士吉田にある実家の診療所の手伝いに週に2回通っています。
父(84歳)は大学病院で胸部外科医として働いた後、祖父の診療所を継ぎ50年以上開業医として力を尽くしてきました。その外来は器質的疾患をもった高齢患者さんが多く、女性外来とはずいぶん異なります。患者さんたちは「先生、俺たちみんなを看取ってから死んでな」とか、「先生、元気で長生きしてな」など冗談とも本気ともつかない言葉を父に残して帰られます。杖を突きながら「こんなに年寄りになっちまった」と嘆く患者さんには「お互いになあ」と答える父の言葉が私には重く響きます。「老いること」「人生に終わりがあること」に向かい合う時間です。私も更年期を過ぎ、「若いころとなんだか違う」と寂寥を感じていますが、「お姉さん(⁉)先生」と呼んでもらい元気をいただいています。90歳を超えたある女性患者さんは「風呂掃除をしながら息が切れると思って診てもらったら、救急車で市立病院に運ばれて即入院になった。」と笑いながら話していました。心不全だったそうです。戦争を生き抜いた方々は我慢強く力強いですね。
ところで富士吉田は名前の通り富士山のふもとにある町で、富士山と五重塔と桜の風景が昨今有名になっています(写真2)。
提供(一財)ふじよしだ観光振興サービス
この五重塔は「忠霊塔」という戦没者の慰霊塔です。夜はライトアップされるので、新倉山の中腹に浮かび上がって見えます。子供のころ厳かな畏れ多い気持ちで見上げていたことを思い出します。桜の季節に塔の下で開かれていたお祭りの明るくにぎやかな様子も懐かしいです。
今私は山梨県立中央病院女性専門科の外来診療と父の診療所の手伝いのほかに、当病院の産業医と、健診センターの仕事にも携わっています。おかげさまで一日一日を精一杯過ごしています。
最後に、コロナ禍のさなかではありますが皆様どうぞお健やかにお過ごし下さい。
山梨県立中央病院女性専門科 塚本路子
https://www.ych.pref.yamanashi.jp/department01/396/