天野理事長ブログ&スケジュール

2019.01.18

改めて世界遺産を考える③

天野惠子理事長の投稿です。

 

世界遺産 モンサンミッシェル

 

第42回世界遺産委員会(2018年)終了時点で、世界遺産は1092件登録されているが、その内訳は文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件である。文化遺産の登録数が圧倒的に多く、かつ、ヨーロッパの物件が文化遺産の約半数を占めている。

 文化遺産は自然遺産と違い、研究の深化にしたがって種類が増えていくことに加え、自然遺産の場合には、MAB計画、ラムサール条約など、世界的なリストアップや保護のための制度が多層的に整備されていて、その中の最上のものを世界自然遺産と出来るのに対し、文化遺産の場合には類似の仕組みが無く、世界遺産に集中してしまう傾向があるようだ。

 

世界遺産審議にあたっては、世界遺産を持たない(もしくは少ない)国の推薦を優先することとされている。

世界遺産登録件数が1000件を超えた状況を踏まえて、近年は1国当たりの推薦数に制約がかかり、2020年からは各国1件のみとすることが決まっている。

 今回私が訪れた国、チェコ、スロバキア、ハンガリーの世界遺産登録を見てみると、

 チェコ:文化遺産12、自然遺産0、複合遺産0

 スロバキア:文化遺産5、自然遺産2

 ハンガリー:文化遺産7、自然遺産1

 自然遺産は2つだけ、ハンガリーとスロバキアにまたがる国境を越える資産の「アグテレック・カルストとスロバキア・カルストの洞窟群」とヨーロッパ12ケ国の保有する「カルパチア山地のブナ原生林とドイツの古代ブナ林」のみ。

 

振り返ると今回の中央ヨーロッパ旅行は文化遺産、その中でも小さな街を訪れる企画であり、最初から見当違いの旅に出ていたことが良く分かりました。

さてそれでは、日本の世界遺産はと調べてみました。括弧内は登録年。文化遺産が16、自然遺産が4でした。

 

文化遺産:

法隆寺地域の仏教建造物(1993)、姫路城(1993)、古都京都の文化財(1994)、白川郷・五箇山の合掌造り集落(1995)、原爆ドーム(1996)、厳島神社(1996)、古都奈良の文化財(1998)、日光の社寺(1999)、琉球王国のグスクおよび関連遺産群(2000)、紀伊山地の霊場と参詣道(2004)、石見銀山遺跡とその文化的景観(2007)、平泉-仏国土(浄土)をあらわす建築・庭園及び考古学的遺跡群(2011)、富士山-信仰の対象と芸術の源泉(2013)、富岡製糸場と絹産業遺産群(2014)、明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼・造船・石炭産業(2015)、ル・コルビュジェの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献(2016)

自然遺産:

屋久島(1993)、白神山地(1993)、知床(2005)、小笠原諸島(2011)

 

赤字の世界遺産は、まだ訪れたことの無いところ。日本の文化遺産については、確かに日本の歴史と結びついて、その地を訪問することに大きな感動があり、今も心に残っている。

近未来には、小笠原諸島と紀伊山地の霊場を訪れることに決めた。宮尾先生の言われるとおりです。文化遺産は、その文化に根付いた環境で育ってきたとか、特別深い興味があるということでないと駄目ですね。

 

*MAB計画:

1971年に発足したMAB(Man and the Biosphere)計画は、「人-Man」が営むあらゆる活動と「環境-Biosphere」との相互関係を理解し、資源の持続可能な利用と環境保全を促進することを目的としたユネスコの国際協力プログラムである。

その活動の一つとして、自然保護と持続可能な利用を考えて、自然と人間との相互関係の構築を目指した地域を「生物圏保存地域Biosphere Reserves; BR」に1976年より認定している。

 

*ラムサール条約:

正式名は特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(Convention on Wetlands of International Importance Especially as Waterfowl Habitat)1971年、イランのラムサール会議で採択。日本は80年に加盟。多様な生態系を持つ湿地の保全が目的。加盟国は条約事務局に最低1カ所の湿地を登録、保全に努める。

 

*ル・コルビュジェの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献: 

世界各地に残るル・コルビュジエの建築作品のうち、フランスを中心とする7か国に残る建築群が対象となっており、大陸を跨ぐ初の世界遺産登録となった。

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