2018.09.26
ME/CFSの治療に光が見えてきた
天野惠子理事長の投稿です。
女性外来の診察の中で遭遇した難病「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」については、NAHWのホームページ上で何回かお話したことがあります。
最初にME/CFSの患者さんに出会ったのは平成20年9月。千葉県立東金病院女性外来でした(女性外来の診察室からNO8)。
患者さんは22歳女性。
主訴は全身倦怠感、全身疼痛、微熱、動悸、めまい。
慢性疲労症候群の診断で治療を開始しましたが、急速に悪化し、平成21年2月には胃痛のため摂食困難となりました。
西洋医学的検査では全く異常を認めず、この病気に対して和温療法が有効であると報告されていた鹿児島大学医学部第一内科鄭教授のもとへ送りました。
同年9月、独歩可能となり、千葉県へ戻り、漢方薬(煎じ薬)で体調を管理するまでに回復されました。
この経験を通して和温療法を自分自身のライフワークとすることに決めました。
その根底には、強い倦怠感、冷え、食欲不振、不眠などの不定愁訴が入浴でのみ改善したという私自身の更年期体験があり、体全体の血流を改善することの治療効果を確信したことによります。
2009年以降、埼玉県新座市静風荘病院で、和温療法を行ってきました。
本疾患における多彩な症状は、脳の異常によるのではないかと考え、当初から神経内科の先生方へ協力を働きかけてきましたが、2015年5月に新潟で開催された第56回日本神経学会学術大会(大会長 西澤正豊教授)で、「筋痛性脳脊髄炎の会」の患者ブースを出すことが出来ました。
その際に、国立精神神経医療センター 山村隆先生、国際医療福祉大学市川病院 角田 亘先生とのご縁が生まれ、2016年より国立精神神経医療センターにおける免疫異常の検査、脳MRI検査などが本格化し、角田先生には経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)を本疾患患者に行っていただき、たった5日間の入院で「天野先生、本当にすっかり良くなります。心も体も元気になります」と報告を受けました。
ただ、その効果は今のところ平均数週間で元に戻ってしまいます。
経頭蓋磁気刺激療法の効果を如何にして延ばしうるかが、現在の課題です。
また、最近では、女性外来の診察室からNO42で報告したBスポット治療が、頚部から上の症状には非常に有効です。
頭重感や思考力の低下と言った症状が少なくなることは、患者さんにとって好循環を生み出します。
やっと、ME/CFSの患者さんに効果があると考える治療法を提案することが出来るようになって来ました。
今年度から山村隆先生を班長としたAMED研究班「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群に対する診療・研究ネットワークの構築」も始まりました。
今まで、医師の間でも知る人が少なく、たらいまわしされてきた本疾患について最新の情報を、国立精神神経医療センターホームページ上に提供できるようになること、それをまず目指します。
(※)AMED(Japan Agency for Medical Research and Development):国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
☆当ホームページにおける、過去のME/CFSに関する記事
①動画:
女性外来受診者における和温療法の症例紹介(2013年9月29日)
②女性外来の診察室から:
Bスポット治療について(2017年12月7日、NO42)
CFS患者の日常生活困難度調査報告(2015年5月7日、NO11)
ME/CFSの名称をめぐる混乱(2015年4月9日、NO10)
ME/CFSの新しい治療法:和温療法(2015年2月13日、NO8)
③コラム:
筋痛性脳脊髄炎は脳の病気(2016年8月24日)
NHKで慢性疲労症候群について語りました(2015年6月9日)
NAHW理事長 / 静風荘病院特別顧問 天野 惠子