2018.04.10
3月市民公開講座・漢方講座ご報告
天野惠子理事長からの3月に行われた市民公開講座の報告です。
3月11日(日曜日)、毎年恒例の性差医療情報ネットワーク主催の市民公開講座が行われました。2003年から開始した私たちの市民公開講座も、今回で15回目です。
近年、医学・医療の進歩は目覚しく、現場の診療体制は急速に変化しています。
しかし、一般の方々がその変化を、診療の場で、医療者から直接解説してもらえる機会はまず無いのではないでしょうか。
診療の際に、多少なりとも患者と医師の間でQ & Aの時間が持てたらいいのですが、現状は、中々そうは行きません。
さらに、もっと日常診療の中で切実に感じるのは、患者さんはテレビの番組やインターネットから得た情報を、正直、自分にとって都合のいいように解釈していると思われることもしばしばです。
患者さんに、医療を受ける際に、基本的に知っておいてほしいことから、最近のトピックまでを提供する場として、市民公開講座を続けています。
今回は、医療の現場でしばしば処方されるようになってきた漢方について、ひろこ漢方内科クリニック 高橋浩子先生にお話していただきました。
漢方は、治療に対する人間の体の反応を土台に体系化された医学です。
古代中国に発するこの経験医学が、日本に導入されたのは5~6世紀ごろ。
日本の風土・気候や日本人の体質に合わせて、独自の発展を遂げ、わが国の伝統医学となりました。
高橋先生のお話は、漢方の歴史、漢方の服用の仕方や医師から処方された漢方薬と市販薬の違いに始まり、こむら返りの特効薬として有名な「芍薬甘草湯」を核として、そこから広がっていく漢方の紹介をして下さいました。
A群の痛みの薬に始まり、B群の腹痛を主とした症状に展開し、最後はC群の精神症状に有効な柴胡と組み合わさった時の効能まで広い範囲にわたって、分かりやすく話して下さいました。
◆A群の漢方薬◆
芍薬甘草湯(68)
芍薬+甘草→こむらがえり、生理痛、しゃっくりなど筋肉の痙攣による痛みに使う
桂枝加朮附湯(18)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜、蒼朮、附子→冷え症で関節の痛み・腫れ、筋肉痛がある場合に使う。特に上肢で有効
◆B群の漢方薬◆
桂枝加芍薬湯(60)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜→効能は、急性腸炎、慢性腸炎、過敏性腸症候群など
小建中湯(99)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜、膠飴→腹痛があり、疲れやすく、胃腸が弱い人に使う。小児・虚弱者の体質改善によく使われる。
黄耆建中湯(98)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜、黄耆→小建中湯の証で、さらに体力が低下していて、腹痛や盗汗のひどい人に使う。
当帰建中湯(123)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜、当帰→当帰を加え、止血にも効果があるので、腹痛、月経不順、不正出血などに使用。
桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜、竜骨、牡蛎→神経質で、不安や不眠のある虚弱な人に使用。インポテンツにも使用。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)
芍薬+甘草+桂皮、大棗、生姜、当帰、呉茱萸、木通、細辛→冷え症の代表的な処方。冷えで 悪化する慢性の疼痛疾患(特に下腹部)に使用。しもやけやレイノー症状にも有効。
◆C群の漢方薬◆
四逆散(35)
芍薬+甘草、柴胡、枳実→精神症状(イライラ、うつ、不安、不眠など)を伴う体力のある人に使用。胆嚢炎、胆石症に有効。
大柴胡湯(8)
芍薬+柴胡、枳実、大棗、生姜、半夏、黄芩、大黄→体力があり、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、イライラしたり、耳鳴り、肩こりなどを伴う人に使用。
加味逍遥散(24)
芍薬+甘草、柴胡、蒼朮、当帰、茯苓、生姜、薄荷、牡丹皮、山梔子→更年期障害の頻用処方として有名。頭痛、肩こり、冷えのぼせ、めまい、動悸、発作的な発汗、四肢の倦怠感、易疲労感などの症状に有効。不安やイライラなどの精神症状にも有効。
最後にろくろ首の写真をお見せします、と高橋先生。
これは、高橋先生が、甲状腺の手術後、自分の首がビョヨーンと長くなったように感じたときに、漢方の名医から勧められたのが桂枝加竜骨牡蛎湯で、その効果は非常にあらたかだったとのことでした。
静風荘病院特別顧問 女性外来
性差医療情報ネットワーク 理事長 天野 惠子