天野理事長ブログ&スケジュール

2017.11.07

第65回日本心臓病学会学術集会①

天野惠子理事長の投稿です。

 

9月29日から10月1日まで、大阪国際会議場で第65回日本心臓病学会学術集会が開催されました。会長は近畿大学医学部 循環器内科学 宮崎俊一教授でした。

私も、もうすぐ75歳。
後期高齢者の仲間入りを目前にした今、水曜日は自分自身の体の調整のため、休日として、ストレッチや整体に通っていますが、講演やインタビューが入るなど、土曜日、日曜日もなにかと忙しく、まとまった学びの時間が取れません。

学会はそんな私にとって、新しい情報をキャッチする大切な時間です。今回も29日のLuncheon セミナーから10月1日のLuncheon セミナーまで、耳をダンボにしてしっかりと講演を聴いてきました。

中でも、感動的だったのは、 大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科 澤 芳樹教授による「iPS 細胞を用いた心筋再生治療の開発」と国立循環器病研究センター 名誉総長 北村惣一郎先生による日本心臓病学会栄誉賞受賞記念講演 「Physician(Surgeon) Researcherになろうと50年―続けることの大切さ」です。

まず、澤先生の話。澤先生は、心臓の機能が低下し、人工心臓や心臓移植の対象となるほどの重症心不全の患者に向けて、患者のふくらはぎから採取した細胞を培養し、シート状にしたものを心筋に貼り付ける治療法を開発し、その治療法は2016年5月より保険診療となっています。

ふくらはぎの筋肉には「筋芽細胞(増殖して筋肉になる細胞)」があり、肉離れなどの損傷を起こすと、サイトカイン(※)というタンパク質を出し、2週間程度で元通りに治癒する働きを示します。このサイトカインを心臓の筋肉に有効に働かせ、心臓の機能の改善を目指す治療法です。
澤先生の今回の発表は、研究をさらに進め、京都大学山中教授との共同研究として、山中教授らが進めている拒絶反応の少ない他人由来のiPS細胞を使い、直径数センチ、厚さ0.1mm程度の「心筋シート」を作成し、機能が衰えた患者さんの心臓に3層にはりつけるものです。筋芽細胞を用いる方法に比し、放出されるサイトカインの種類が多彩で量も多く、心筋の再生確率も高く、また、患者さん自身のiPS細胞を使う場合に比べ、作成時間や費用を抑えられるということでした。医学・医療の発展が速いのに驚かされました。
 
因みに、澤先生の教室の年間手術症例数は1200例だそうです。
一人の外科医が1年に執刀できる症例数は200例ぐらいまでですから、澤先生の教室では優秀な外科医が続々と育っていることを物語っています。

※サイトカイン:免疫に関与する小さい分子量の特定のタンパク質の総称。現在までに数百種類発見されていて、細胞間の情報伝達や、炎症、免疫、生体の防御への関与が知られている。

赤いハートクッションと医師

Copyright © 2014 Japan NAHW Network. All Rights Reserved.