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2016.10.25

冠動脈カルシウムスコア

今回は、虎ノ門病院 健康管理センター医師 大本由樹先生の投稿です。

 

みなさんは動脈硬化の検査というとどのような検査を思い浮かべますか?

頸動脈エコーや脈波伝搬速度検査(血管年齢検査)などでしょうか?

インターネットなどで検索してみると、たいていこのような検査がヒットすると思います。

それぞれ、頸動脈の壁の厚みを見ることで動脈硬化を評価したり、脈波をみることにより動脈の硬さを評価したりすることで、全身の動脈硬化の程度を推定しようとする検査で、その有効性も確立されています。

 

 それでは、冠動脈カルシウムスコアという検査をご存知でしょうか?

心臓を栄養する動脈である冠動脈の石灰化を測定するCT検査です。

血管の石灰化は動脈硬化の現れで、冠動脈に起きた動脈硬化を画像のもつCT値というもので評価しようというものです。

 

 冠動脈カルシウムスコアは冠動脈の動脈硬化評価として有効であることが、数多くの論文で示されています。例としては、冠動脈カルシウムスコアが高いほど将来の心血管事故が高い1)ことや、無症状の人でかつ冠動脈カルシウム0ということは、動脈硬化疾患発症のリスクが低い2ことなどがあげられます。

 もちろんこの検査結果が絶対というわけではなく、石灰化が存在しなくても冠動脈疾患を発症する方はいらっしゃいますし、石灰化があってもその時点での治療の必要な冠動脈狭窄が必ずあるわけではありません。ただ冠動脈の動脈硬化の程度の評価としては有効な方法で、スコアの点数が高いほど動脈硬化が進行していたということになりますし、危険因子を管理しなければ冠動脈疾患を中心とした動脈硬化疾患を発症しやすくなると考えられます。

 

 冠動脈の動脈硬化もほかの血管の動脈硬化と同様、危険因子としては一般に、高血圧、脂質異常、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病といわれていますが、同じ動脈硬化のリスクをお持ちの方でも、動脈硬化が進んでいる方と比較的進んでいない方がいます。この検査に限らず、画像検査は現状の進行度を見る点で参考になると思います。

今後の対策を練る上でご自身を知るところから始められるのもよいのではないでしょうか?

 

 ちなみに、動脈硬化はご存じのとおり、性差が存在します。この冠動脈カルシウムスコア(石灰化)についても、男性は主に50歳代から始まるのに対し、女性は10年遅い60歳代から始まります。

 

注)冠動脈カルシウムスコアの測定には基準を満たした方法(心電図同期、スライス厚等)で撮影しますが、冠動脈の石灰化は胸部CT検査をおこなっているとある程度評価することができます。

 

1) ACCF/AHA 2007 clinical expert consensus document on coronary artery calcium scoring by computed tomography in global cardiovascular risk assessment and in evaluation of patients with chest pain: a report of the American College of Cardiology Foundation Clinical Expert Consensus Task Force (ACCF/AHA Writing Committee to Update the 2000 Expert Consensus Document on Electron Beam Computed Tomography) developed in collaboration with the Society of Atherosclerosis Imaging and Prevention and the Society of Cardiovascular Computed Tomography.

J Am Coll Cardiol. 2007 Jan 23; 49(3):378-402

 

2) Coronary artery calcium score and risk classification for coronary heart disease prediction.

JAMA. 2010 Apr 28; 303(16):1610-6

 

 

国家公務員共済組合連合会 虎ノ門病院 医師 大本 由樹

http://www.toranomon.gr.jp/departments/c_center/health_screening/

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