天野理事長ブログ&スケジュール

2016.08.24

筋痛性脳脊髄炎は脳の病気―国際シンポジウムのご案内

天野惠子理事長の投稿です。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群については、何度かお話してきました。

其の原因は、以前よりウイルスや細菌感染により、神経系、内分泌系、免疫系の変調が生じて、脳や神経系の機能障害を起こすと考えられています。しかし、其の発症メカニズムは明らかになっていません。

 

201110月の科学雑誌「プロス・ワン」に、「CFSにおける抗CD20抗体リツキシマブを用いたBリンパ球枯渇療法の効能:二重盲検・プラセボ対照試験」と題する論文が掲載されました。

CFSとリンパ腫を併発していた患者の癌の化学療法中に、CFSの主症状が軽減されたことから、30人のCFS 患者を無作為にリツキシマブ群と生理食塩水群に分け、2週間隔で2回の投与を行い、その後12ヶ月間追跡した報告です。

実に、リツキシマブ群の15人中10人(67%)に、非常に良い又は中程度の効果が認められたのです。B細胞の急速な枯渇にも関わらず、リツキシマブ治療27ヶ月後に開始する遅延性の応答は、CFSが自己免疫疾患であり、臨床的応答に先行して自己抗体が緩徐に排除される可能性と矛盾しないことを示唆しています。

 

20157月の「プロス・ワン」には、「ME/CFSにおけるBリンパ球枯渇療法:リツキシマブ維持療法の非盲検第二相試験」と題する論文が掲載されました。今回の非盲検第二相試験では、29人の患者にリツキシマブを2週間隔で2回注入後、3ヶ月後、6ヵ月後、10ヶ月後、15ヵ月後に再度注入し、36ヶ月間追跡し、29人の患者のうち18人に、非常に良い又は中程度の効果を見ています。36ヶ月の追跡終了時には、この18人のうち11人が、臨床的寛解状態を継続していたと報告されています。

 

ME/CFS患者のサブグループにおいて、リツキシマブの維持注入療法による長期間のBリンパ球枯渇と、持続的な臨床的応答との間に関連が認められたこと、Bリンパ球の枯渇/再生と遅延性応答/症状再燃のパターンが認められること、女性が男性より3倍高い有病率を示すこと、以前から高齢のME/CFS患者でB細胞リンパ腫のリスクが高いことが報告されていることなどは、ME/CFSが自己免疫疾患の異型である可能性を示唆しています。

 

リツキシマブの治験の承認に向けて、ノルウェーではさらに研究が続いていますが、日本でも、国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部部長 山村隆先生を中心としたグループが、本格的にME/CFSに関する免疫異常の研究を開始されており、極めて有望な知見が得られています。今年10月には医療関係者向けの国際シンポジウムが日本で開催されます。

 

是非、神経内科を専門とする先生方へのお声かけをお願いします。

 

日時 : 20161023日(日)13時~18

会場 : 東京大学鉄門記念講堂(本郷キャンパス医学部教育研究棟14F

対象 : 医療関係者(一般の方の参加も可)

参加費 : 無 料

プログラムについては下記のME/CFS患者会のホームページをご覧になって下さい。

https://mecfsj.wordpress.com/

青空

 

 

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