2016.02.23
色覚に関する男女差と思いやり
「男と女の間には深い、深い、川がある」とは、ある既婚の高学歴女性が私にこぼした言葉です。
「男と女の間には深い、深い、川がある」とは、ある既婚の高学歴女性が私にこぼした言葉です。
しかしこれは、決して彼女の主観だけからくるものだけではないようです。
少し興味深いお話をしたいと思います。
実は女性と男性では同じものを見ていても、見えている色が違う、という研究成果が最近発表されたことをご存知でしょうか?
2012年にアメリカで発表された面白い研究結果があります。
発表をしたのはニューヨーク市立大学の神経科学を専門としているイスラエル・エイブラモフ教授の研究チームです。
結果を簡単にご紹介しましょう。
女性と男性ではものを見る目そのものの機能に差はありません。しかし視神経を通して脳に伝達された情報の処理能力が違うそうです。そのために同じ色をみても感じ方が違う、ということがおこるのです。
脳内での情報処理能力に影響を及ぼしているのは、男性ホルモンである「テストステロン」である可能性が高いとエイブラモフ教授は述べています。
女性は男性よりも青・黄色・緑に関する識別能力が高く、微細な色の違いを識別するそうです。男性では「同じ色」に見えてしまう実は「別の色」が、女性にははっきりと「別の色」と認識されるわけです。教授によれば、男女の色の識別能力は「わずかではあるが確実に存在する」そうです。
女性は男性よりも色覚に優位性をもっているのですね。
そのために、たとえば同じものを見るにしても女性のほうが長く見ていられる一方で、男性はすぐに飽きてしまう、そんな現象もおこりうるかもしれません。
男性からすると「どれも同じじゃないか・・・」とあきれてしまうのに、女性が延々と同系色の口紅や洋服をあれがいい、やっぱりこれかしら、と悩むケースが多いのも頷けます。
女性の方が、ショッピングは楽しいと感じる方が多いですね。これも、より多くの色情報を商品から得ているために、ウィンドーショッピングさえも刺激的であるのかも、と考えるとなかなか面白いですよね。
男女の身体的な違いをより正確に知ることは、異なる性への思いやりにもつながるかもしれないと私は思います。
例えば、男性が女性よりも色の情報に感度が低い(判別に長い波長を必要とする)ということを知っていれば、
お母さんが「お父さんたらどうして私のおしゃれに関心がないのかしら・・・私に関心がなさ過ぎるわ」「どうして顔色が悪いのを気づいてくれないのかしら」
お父さんが「どうでもいいことに時間をかけて、優柔不断にもほどがある」「なんであれよりこっちがいいのか、さっぱりわからない」
などと互いに批判しあうことも少しは減るのかもしれない、そう思います。
㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部
JADP上級心理カウンセラー 天野 馨南子