女性外来10年史

NAHW10年史 北海道支部

NAHW10年史 北海道支部

1 Gender Specific Medicineとの出会い
性差医療情報ネットワークの10年史として北海道における活動をまとめてみると、日本における女性の社会進出、私自身の仕事の領域の移りと大きく重なることに改めて気づきます。
私が天野先生にお会いしたのは10年前、引き合わせてくれた研究会は「ホルモンと循環器疾患研究会」でした。北海道では現知事の高橋はるみ氏が道立病院に「女性外来を開設」を初立候補の選挙公約にあげ、札幌医科大学で私が開設コーディネーターを務め産婦人科、外科からスタートした時期でした。産婦人科での女性外来受診者の意識調査結果をまとめあげ、天野先生の特別講演の前座として話すチャンスをいただきました。特別講演ではじめて耳にした「Gender Specific Medicine」の響きと科学として好奇心を引きつける医学の新しい領域に引き込まれ、これは北海道で今も続いている財産となりました。
25年間母校で続けてきたいわゆる臨床、教育、研究の生活を後にし、何度も訪れる苦難を乗り越えながら自力で理想の医療を作り上げることになりました。日本医師会男女共同参画委員会委員、北海道医師会常任理事をこなすうちに、社会という大きな組織の中で、目的を実現するためのスキルとネットワークを学習した10年間となりました。女性医師のキャリアを継続するために医療界、社会全体を変革しなければならないという課題を解決するために、医師という職能集団の代表として行政へさまざまな提言をするという形で、中央と北海道で活動してきた時期でもありました。

2 北海道性差医学・医療研究会の立ち上げ
Gender Specific Medicineを「Sex Difference Medicineと置き換えた性差医学の基礎と臨床を横断的に勉強していこう」をコンセプトに内科、小児科、産婦人科医師、薬剤師、臨床検査技師の仲間で北海道性差医学・医療研究会を設立して10年間、市民公開講座として現在も継続しています。2004年の第1回研究会に天野先生に特別講演をしていただいてから、当初の目的通り疾患の基礎、臨床の性差に拘り続けた内容で身体をほぼ一回りし2巡目に突入しています。研究会の講師を依頼すると多くの医師、研究者が性差の視点で研究プログラムを組んでいなかったと言いますが、性差医学の魅力が新しい研究、医療展開の突破口になると信じ、今後も同じ路線で継続していきたいと考えています。

第1回 2004.7.3「性差医療の確立をめざして」
第2回 2005.2.4「検査データにおける性差」
第3回 2005.7.22 「性差医学-基礎からのアプローチ」
第4回 2006.1.20「循環器領域における性差」
第5回 2006.7.30「がんの性差」
第6回 2007.7.20「メタボリックシンドロームと性差」
第7回 2008.8.9「脳の性差」
第8回 2009.11.28「骨粗鬆症と性差」
第9回 2010.11.13「感覚器の性差」
第10回 2011.11.13「肝臓疾患の性差」
第11回 2012.11.13「ストレス疾患と性差」
第12回 2013.11.2「メタボリックシンドロームと性差」
第13回 2014.10.18「脳とこころの性差」

3 女性医師支援に対する医師会の取り組み
2004年から日本医師会女性会員懇談会委員に組織され、医療界における男女共同参画実現を達成するための課題を情報共有し、2006年に男女共同参画委員会に名称を変更して以降、これまでの検討されてきた課題を具体的なアクションに結びつけるという大きな進歩がありました。80医学部の入学者に占める女子学生比率は30%を越え、大学によっては50%近い高比率となる時代が到来し、医学部教育の現場、臨床研修指導の体制、勤務医としてのキャリア継続の問題点など、2010年以降は各学会、大学などにおける女性医師支援活動と連携しながらの具体的活動期に突入しました。
男女共同参画委員会では毎年男女共同参画フォーラムを開催し、その年に決めた大テーマに沿って議論を深め、フォーラムの講演者として参加した厚生労働省の行政官を通して国に具体的提言をしてきました。女性医師の社会的役割を問題にしていた2005年当時から時間が進み、医療崩壊をくい止めるkey personは女性であることを明確にし、医療を守るためには男性の働き方も含めた医療人のライフスタイルを変え多様性を認めることが重要であることを10年間、主張してきました。この間に勤務女性医師、男性医師の意識調査報告書などを国や現場の病院管理者に提出、トップの意識転換を求めるアクションに繋げて来ました。

第1回 2005.7.30 東京
「女性医師は何を求め、何を求められているか」
第2回 2006.7.29 大阪
「次世代育成支援と男女共同参画」
第3回 2007.7.29 神奈川
「医師の勤務環境の改善を目指して」
第4回 2008.7.19 福岡
「医療崩壊をくいとめるために、今何ができるか、何をすべきか」
第5回 2009.7.25 札幌
「今、医師の働き方を考えるーともに仕事を継続するためにー」
第6回 2010.7.24 鹿児島
「男女共同参画のための意識改革」
第7回 2011.7.30 秋田
「育てる・男女共同参画のための意識改革から実践へ」
第8回 2012.7.28 富山
「変わる〜男女共同参画が啓くワークライフバランス」
第9回 2013.7.27 山口
「みんなちがって、みんないい〜伝えたい、豊かな医療人をめざすあなたへ〜」
第10回 2014.7.26
「医療界における男女共同参画のさらなる推進にむけて〜10年で医療界における男女共同参画は進んだのか〜」

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