女性外来10年史

岡山大学医学部付属病院泌尿器科女性外来のあゆみ

岡山大学医学部付属病院泌尿器科女性外来のあゆみ

岡大泌尿器科

大和豊子

2001年5月鹿児島大学で性差医療に基づいた女性専用外来が開設された後、エビデンスに基づいた性差医療を確立する目的でNAHW(NewApproachtoHealthandWelfare)が立ちあがった。
女性患者さんが泌尿器科を受診するには敷居が高いのではないか、気楽に受診して十分な治療をうけてもらいたいという思いを持つ岡大泌尿器科公文裕巳教授指導のもと、岡大では2003年5月に泌尿器科女性外来を開設した。丁度そのころ天野惠子先生とのご縁を頂きNAHWにも参加させていただいた。

女性入局医師は7名であったが、妊娠・出産で一時的に抜けることが多く、立ち上げから2年間は2人だけで、診療・データー集計の打ち込みから解析まで大変だったことが思い出される。人員構成がピラミッド型でないことやアシスタントがいないことは事業を進めるに当たっては不利であることを実感した。
現在では担当医師が抜けることはなくなり、強力なアシスタントが配置され、事業が前進していると感じられる。
アンケートを実施したところ、診察は女性医師に受けたい、特に膀胱鏡をするなら女性医師を希望する。一方手術するときは男性医師でも構わない。という女性患者さんの気持ちが分かった。受診してもらうことが第一歩であり、その意味でも女性外来を開設したことは有意義であると自負している。
尿失禁や骨盤臓器脱は高齢になるに従って多くなる疾患で、特に高齢女性は羞恥心が強い様子がうかがわれ、同性医師が穏やかに話を聞く外来は喜ばれている。開設当時の新聞記事を握りしめて受診される高齢女性に沢山出会えたことは私たちにとっても大きな喜びである。侵襲の少ない経膣的手術件数の増加に伴い、手術対象・薬物療法適応の排尿トラブル・漢方治療対象に群別されてきた印象がある。大学では同意を得たうえで治験に参加していただく事が多いが、各群とも興味あるデーターが得られ発表してきている。当外来に於いては治験に参加してもらうことで、医師と一緒に治してゆく気持ちになってもらっていることが多いように思われる。
漢方治療は当初、泌尿器科的症状だけが対象であったが、NAHWで女性特有の不定愁訴を中心に漢方がどのくらい女性の訴えに有用か学んだ成果から、現在では総合診療内科に漢方外来を開設するに至っている。
元来当院泌尿器科は性機能も得意分野としており、女性外来では骨盤底手術と女性性機能の関連データーを集積している。本アンケート調査を実施することで、女性患者さんもフランクに性機能について発言できるようになってきてる。
継続すること、スタッフが増えることが外来の発展には重要で、NAHWからの情報で底上げもし、この後も皆で女性患者さんのQOL向上に貢献してゆきたい。

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