女性外来10年史

女性外来セミナーへの思い

女性外来セミナーへの思い

株式会社ツムラ 福田智子

弊社では2004年から全国の女性外来を担当されている先生方を対象として、女性特有の疾患に対する漢方治療を学ぶ「女性外来担当医師のための漢方セミナー」を全国主要都市を中心に開催しています。漢方習得度別(入門編、フォローアップ編、上級者編)に学ぶ一泊二日のセミナーで、現在までにのべ600名以上の先生方にご参加いただいています。

本セミナーの特徴は、“このセミナー内容をマスターすることで、女性外来を訪れる漢方薬を必要とする患者さんの疾患ほとんどに対処できるように”と講師の天野惠子先生、木下
優子先生が組んだプログラムであるという点です。

入門セミナーでは、天野惠子先生の女性外来の現状や最新のトピックスなどについての講義、田代眞一先生の”漢方はなぜ効くのか”を科学的な切り口でお話いただく講義、木
下優子先生の漢方(概論や基礎知識・領域別の治療)の講義や実技の講義、その他夜のナイトディスカッションでは、ご参加の先生方同士の情報交換や現在難渋されている症例、
成功症例などについての検討会を行っています。各講師やご参加の先生方同士で活発な意見やアドバイスが交わされ、非常に活気溢れる時間となります。

私はこのセミナーを担当させていただいて三年が経ちますが、ナイトディスカッションや実技講義などを通じて、様々な専門の先生方が女性外来という共通の診療科で同じ目標を持
ち、悩みや壁にぶつかりながら患者さんの症状を少しでも和らげたいと奮闘されていることを知り、その日々の努力と熱意に惹きこまれ深く感銘を受けています。

西洋薬だけでは限界を感じ漢方に魅力を感じ可能性を求めにいらっしゃる先生をはじめ、これから女性外来を立ち上げるのでここでの情報交換を活かしたい、女性で漢方を希望す
る患者さんが多いので使いこなせるようになりたい、自分の診療の幅を広げたい、などいろいろなきっかけや思いを胸にご参加いただく先生方が、ディスカッションなどの交流を通して目には見えない一体感に包まれていくのを感じます。ハードなセミナーにもかかわらず、セミナーを終えて満足そうな顔で帰られる先生方の笑顔を見るととても力づけられます。私たちスタッフも、貴重な時間を割いて参加してくださる先生方に充実した二日間としていただけるよう、少しでも学びやすい環境や雰囲気作りができればという気持ちで臨んでいます。

女性の体は複雑さと、丌安定さがあり、女性のQOLを下げる健康障害は疾患として診断されるものはむしろ少なく、丌定愁訴によるものが多いといわれています。特に更年期の複
数の症状では色々な診療科を次々に受診し、いわゆるたらいまわしになってしまう患者さんもいると聞きます。そういう中で、「女性外来は、どこに行ったらいいか分からないという患者さんが間違った治療を受けないように道筋を立ててあげるのが一番の使命。そして対話と信頼関係を重視したNBM(Narrative-basedMedicine-物語と対話による医療)と、EBMを取り入れた外来であることが大事」、「先生方には西洋薬と漢方薬を両方使うことで他の先生が治せない症状を治してあげられることを実感していただきたい」と言われている天野先生の言葉は心に響きます。私自身も、このセミナーをきっかけに一人でも多くの先生方に漢方医学が伝わり、一つでも多くの女性外来で漢方治療が選択できる環境が実現すること、そして一人でも多くの患者さんが救われることを願いながら、これからもますます充実したセミナー開催に努めていきたいと心から思っています。

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