女性外来の診察室から

No.30 女性外来の診察室から(福島県)

福島県立医科大学病院性差医療センター医師・山形県立中央病院内科医長 鈴木恵綾先生の投稿です。

 

私は、日本高血圧学会高血圧専門医として、山形県立中央病院で二次性高血圧や難治性高血圧の診療を行いながら、月に1回、福島県立医科大学病院性差医療センターで、「女性外来」診療に携わっています。

 

高血圧の患者数が日本一多い山形県の「高血圧外来」と、福島県立医大性差医療センターの「女性外来」の両方に関わることにより、「女性外来」を受診される患者さんの特徴を実感しています。最も強く感じているのは、「強い意志を持って、主体的に受診される患者さんが多い。」ということです。

 

福島県立医大性差医療センターを受診される患者さんの多くが、既に他の医療機関を受診済みです。しかし満足する効果が得られず、不安を抱えて当センターを受診されます。山形県立中央病院の高血圧外来も他院からの紹介型外来であり、前医があるのは同様なのですが、医師が主体の紹介です。

一方、福島県立医大性差医療センターの場合、ご自身が電話で予約を取るシステムですので、患者さん自身の主体性がなければ、受診には至りません。そのためか、診察時には、「何とかして良くなりたい!」という患者さんの気持ちがひしひしと伝わってきます。

 

また、「女性外来」の診察を通し、「診断をつけることも大事。しかし患者さんが求めているのは、診断以上に、症状を少しでも改善するために何か方法はないのかという、具体的な対応だ。」ということを実感しています。つまり、器質的疾患の検討と同時に、原因となるそれぞれの背景を探り対応していく、それこそが「女性外来」の本質であると思います。

 

例えば、更年期女性の高血圧について取り上げて見ましょう。

以前は低かった血圧が高くなったことに驚き、不安を覚えて受診される5060代の患者さんが多くいらっしゃいます。もちろん、JSH2014に従って高血圧診療を行いますが、同時に、次のような対応を心がけています。

 

・まず、女性では閉経を契機に血圧が上昇すること、それは当然のことなのだとの知識を提供し、理解を図ります。

・次に、家庭血圧の測定・記録により、ご自身の正しい血圧を把握していただきます。その上で、減塩による食事療法と運動療法を励行します。

・更年期による頭痛や肩こり、倦怠感が、血圧をさらに上昇させることも少なくありません。ウォーキングや体操により、これらの症状の改善も期待できます。

 

これらのことを通し、血圧を一つの目安として、ご自身に過度の負荷をかかっていないか、生活習慣を見直し体調の自己管理ができるようになると、血圧だけでなく、身体的症状も精神的症状も安定するのです。

 

女性は、女性ホルモンの変動に加え、男性以上に複雑な社会背景・文化背景を抱えています。女性が生涯を通して身体的にも精神的も健やか過ごしていくことを目指し、患者さんとともに歩んでいくことが、「女性外来」が果たすべき重要な役割だと感じる今日この頃です。

 

 

山形県立中央病院内科医長、福島県立医科大学病院性差医療センター医師                                 鈴木 恵綾

http://www.ypch.gr.jp/department/diabetes/index.html

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