女性外来の診察室から

No.25 女性外来と不登校

岐阜県総合医療センター 女性外来客員部長 廣瀬玲子先生の投稿です。

 

~女性医師と子育てと不登校のテーマ~ 

<女性外来を受診する思春期の患者さんには・・・>

女性外来の思春期の患者さんでは、女性外来特有の背景・心理・体質も含めての診療の中で、月経困難症・PMS・摂食障害などとともに、不登校が合併していることを知ることができます。

不登校まではいたらなくとも、月経前や月経時には学校を休むことが多いなどの、不登校への兆しがみられることもあります。

そうした状態で何かのイベントが偶発することで、不登校が顕在化することがあります。そして不登校の原因は、その偶発したイベント(事故、クラス替え、いじめ、先生・友人など)のせいにされることもしばしばです。

 

<不登校は体の問題>

女子の不登校が顕在化するのは、初経の前後に身長が急激に伸び、ホルモンの分泌が急激に増し、大きく心身の変化する時が最も多いことは、診療をしていて明らかです。

こうした10代の多くは前かがみで冷えており、筋力に乏しく、体のあちこちに圧痛点を認め、全身の気血の巡りが良くありません。それにはそれの、生活習慣の背景も認めます。

ここで不登校を、心の問題だけにしてよいのでしょうか。

身体の問題として診療し、必要な検査を経て、必要な生活習慣の改善を具体的に状況に合わせて行い、家族や良い大人の支援や交流の中で、運動療法・漢方・鍼灸などを中心に組み合わせますと、不登校準備状態であれば改善して元気になっていかれることも多く、やりがいを感じられます。

 

<全寮制フリースクール元気学園との出会い>

不登校には最初のステージがあり、その後に保健室登校や、毎週1時間のカウンセリングだけの時期、これが何か月も続くのはよくないと思いながらも、時間ばかりが過ぎていきます。

不登校は、体力、コミュニケーション力、学力という3つの能力が不足していること、これを科学的にアプローチすること、不登校だった子どもたちが、本当に実力をつけて社会に巣立っている実績のある、経験豊かな、その道のプロにご指導をお願いすること、これらはとても大切なことと思います。

まさにそのような現場のひとつであるのが、静岡市にある全寮制フリースクール元気学園であり、そことのご縁ができました。

 

全寮制フリースクール 元気学園 HP

http://www.genki-gakuen.gr.jp/

 

小林高子校長の著書

「不登校になったら最初に読む本」(元気学園のHPから確認できます)

 

<不登校を科学的にアプローチする>

今では元気学園には、静岡ファミリークリニック(杉山三知代院長)も併設(自費診療)のほか、協力医療機関も多く、医学的見地からの視点がたくさんとりいれられています。

時に大学などと共同で研究し、発表されています。

 

最近の思春期の子どもに側彎が多いことは周知され、学校保健にも取り入れられるようになりました。不登校児にも頻度が高く、なんとなく疲れやすいなどの原因になります。元気学園では、適切な栄養と運動療法や睡眠の状態の改善などが有効であると実証されています。疲れなくなった、気にならなくなったと、まず自覚症状が改善しています。

 

アトピーや喘息も不登校児に多くみられますが、環境に原因がある上に、ストレスが悪化させる病態でもありますので、とても清掃の行き届いたすがすがしい生活空間であることから、転地療養ともなり、適切な食事もあわせ、改善します。

 

摂食障害にみられる滴状心のように、体の伸びに心臓のポンプ力が追い付かず、脳への血流が不十分で、集中力が欠けたりするなどの生理学的視点も重視します。元気学園では、十分な栄養と、本人が疲れないよう楽しく少しずつ必要最小限の運動を負荷していきます。これは経験豊かな先生による、24時間毎日の見守りのもとで可能になります。

こうして、見違えるように立派な体になっていく生徒さんが元気学園では多いです。

みごとに、体重が少ない子は増え、多い子は減ります。毎日の生活が治療です。

 

<女性医師と不登校>

女性医師が子育てをする場合、その背景から不登校のリスクは高いと言えます。

また、職場には看護職をはじめとした多くの女性が、子育てと仕事の両方の人生のテーマをかかえています。女性医師はその相談を受け、皆の健康を守る立場にあります。

出産後の育児の課題は多くの支援体制が整いつつありますが、この思春期の課題は、母親が自らの子育ての失敗という罪の意識をもちやすいなど、相談しにくく、重くのしかかります。

女性医師として、ホリスティックに、医学的に子育てをテーマに探求することは、多くの心身の疾患の予防につながることは間違いなく、今後も関係者の皆様とともに学びつつ、ライフワークとしていきたいと思っています。

 

<元気学園の不登校セミナーと相談会>

静岡の元気学園では、毎週ではありませんが、土曜に予約制で不登校セミナー・相談会をされています。HPで日程をご確認ください。

岐阜では昨年11月に岐阜市教育委員会により、元気学園の清水理事長と小林校長の講演会を開催していただけました。その後の岐阜周辺の方への窓口として、1か月に1度、広瀬内科クリニック3階のミモザ道場でも、元気学園の不登校セミナー・相談会を開催できるようになりました。日程はHPでご確認ください。

全寮制フリースクール 元気学園 HP

http://www.genki-gakuen.gr.jp/

 

 

岐阜県総合医療センター 女性外来 客員部長

http://www.gifu-hp.jp/WomensClinic/

広瀬内科クリニック 女性漢方外来

          ミモザ道場 (広瀬内科クリニックセミナースペース)

                                 廣瀬 玲子

桜を見上げる女子

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