女性外来の診察室から

No.23 和歌山労災病院女性専用外来の歩み

和歌山労災病院 働く女性研究センター長 辰田仁美先生の投稿です。

労災病院全体での女性外来については、このホームページの「女性外来10年史」で書かせて頂きました。

現在も独立行政法人労働者安全機構の女性外来は、診療、研究、普及の3つの柱を持っています。

 

1.診療

和歌山労災病院に女性専用外来が設置されたのは20035月です。当初、病院からの要請により女性外来が設立され、初診外来を中心に行っていましたが、患者さんのニーズに応える形で診療科が増設されました。

今までに、総合診療科、漢方外来、心療内科、産婦人科、泌尿器科、乳腺外科、肛門科が開設されました。残念ながら、現在は心療内科と泌尿器科は担当医師の転勤で診療できておらず、漢方外来を中心に診療しています。

心療内科のニーズは大きく、漢方治療で改善する場合は当院で加療します。

一方、専門医師への紹介が必要なことも多く、心療内科と当院の漢方外来の両方に通院している患者さんもいます。漢方外来を始めて再診の患者が増えてから、当院の女性外来も徐々に認知度が高まりました。

今年4月、泌尿器科に女性医師が赴任したので、泌尿器科を再開できる予定です。

 

2.研究

1期(平成15年度から19年度)は「女性外来のモデルシステムをつくる」をテーマに各地の労災病院でアンケート調査を行いました。

その結果から女性外来受診者は家庭や仕事のストレスが多く、受診に繋がっていることが判明しました。そこで第2期(平成21年度から25年度)は、「働く女性のストレスと疾病発症・増悪に関連する研究」を行い、ストレス・疲労を客観的に評価するために加速度脈波を測定しました。

以前の研究では、糖尿病や慢性肝炎で加速度脈波を測定したところ、疾患の重症度と比例せずに自覚症状の問診と関連があったと報告されています。

2期の研究では、心療内科疾患でも同様に疲労の問診票と加速度脈波は関連があるとの結果を得ました。

3期(平成26年度から現在進行中)では、就労女性を対象に、交代制勤務でのストレス・疲労の男女差や職種による違いなどを研究しています。

今期は、疲労・ストレスの客観的マーカーとして、加速度脈波に加えて血液検査で、酸化ストレス(d-ROM)と抗酸化力(BAP)も測定しています。

 

3.普及

女性外来の一般の人への普及としては、毎年女性外来を設置している労災病院が順番に「女性医療フォーラム」を開催しています。

9回までは、「女性外来10年史」に乗せて頂きました。当院では平成25年に第11回を担当し、「疲労と癒しをかがくする」をテーマに行いました。

疲労と癒しを医学と文化の視点から講演頂き、特別公演は作家の辻原登さん、特別対談は2012年ロンドンオリンピックに出場した体操選手の田中理恵さんにお願いしました。

田中理恵さんからはオリンピック選手として、ストレスを力に変えて乗り切った体験談などをお聞きしました。2017年秋に再び和歌山県で行う予定です。

 

今後も当院の女性外来では、働く女性の健康を維持するために、性差を考慮しつつ、診療、研究、普及を担っていきたいと考えています。

独立行政法人 労働者健康安全機構 和歌山労災病院

呼吸器内科・働く女性研究センター長 辰田仁美

http://www.wakayamah.johas.go.jp/medical/kinrousya/josei.html

 

和歌山 円月島

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