女性外来の診察室から

No.5 私が診察した「線維筋痛症」第1号の事例 ②

この患者さんは、18ケ所の圧痛点全てが陽性であり、①の基準も満たしていました。

この患者さんは、18ケ所の圧痛点全てが陽性であり、①の基準も満たしていました。

初診時(2002年8月)に、線維筋痛症の病態・診断・治療について説明し、セロトニンの測定を行いました。

 

セロトニンが極端に低値であること(6mg/mL: 正常値57~230mg/mL)、セロトニンが低いことで、痛みを強く感じている可能性があること等を説明し、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の期待される効果と副作用について説明した後、パロキセチン10mg(就寝前)を投与しました。1ケ月後、疲労感、痛みは格段に軽減しましたが、首と肩甲骨の骨の部分に一日中ピリピリ感があるとのことでした。また、両手の外側に鈍痛が肩まで上がるように残っているとも言っておりましたので、パロキセチンを20mgに増量しました。

 

疲労感、全身の痛みが普段には忘れられるぐらいになり、いつの間にか蕁麻疹も出なくなり、手のむくみも、生理前のイライラ、過食も無くなりました。右手第3~5指にかけての筋力低下については、小児期の外傷が原因の頸椎変形によるものと整形外科にて診断されました。

 

2003年3月花粉症が出現。以前からこの時期には疼痛が悪化し、激痛で夜半目が覚める、両手がむくむ等の症状が出ていましたが、やはり痛みが増し、パロキセチンを30mgに増量しました。その後、手のむくみは完全に消失し、就寝時の痛みからも解放され、よく眠れるようになりましたが、身体の芯にはじわじわとした痛みが居座っており、ストレスが重なると表面に痛みが出るとのことでした。また、天候が不順な時、湿気の多い日に、体調が特に悪くなり、蕁麻疹が出現し、疼痛が増強するとも言っておりました。通常は、パロキセチン20mgを服用し、疼痛悪化時に 30mgを服用する(大体2回/週の頻度)こととしました。その後、パロキセチン10mgを維持量として継続使用して今日まで至っています。

 

その経過の中で、この患者さんは2007年、発達及び知的障碍児・者を支援する会」特定非営利活動法人 はぁもにぃ」 を立ち上げられました。

発達及び知的障碍児・者の支援をするNPO法人です。彼らが解りやすく、過ごしやすい社会は、全ての人に解りやすく、過ごしやすい。そんな地域社会の構築が目標です。

 

2008年には、日中一時支援(放課後対策型)サービス提供、お菓子工房 はぁもにぃ(洋菓子製造・販売)OPENを進め、2009年には児童デイサービス(Ⅱ型)サービス提供開始
2010年には、「地域の方達と障碍のある方達との架け橋になりたい」Community cafe ♭(ふらっと)」のオープンと快進撃を続けていらっしゃいます。

 

線維筋痛症の成因については、外傷が引き金になると報告されています。ことに頚部への外傷例では四肢への外傷例に比し13倍の発症率であるとされています。

 

近年では、本疾患は中枢神経系の疾患であると考えられており、脳における多様な神経化学物質の異常が同定されています。

 かも虹

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