女性外来の診察室から

No4. 私が診察した「線維筋痛症」第1号の事例 ①

アナウンサーの女性を自殺にまで追いこんだ難病、線維筋痛症の2002年当時の診断基準、それはどのようなものだったのでしょうか。

前回お話ししましたように、2007年、日本テレビの女性アナウンサーが「線維筋痛症」を苦にして、自ら命を絶つというニュースが日本中を駆け巡りました。この病気がテレビ、インターネット、週刊誌で取り上げられることも多くなり、一挙に一般の方々に認知されるようになりました。私が、線維筋痛症という病気を知ったのは、日比谷高校時代の同級生からの相談がきっかけでした。その後、自分の周りを注意深く観察して見ると、どうも線維筋痛症ではないかなと思われる患者さんが結構おられました。今回は、平成13年9月、私が千葉県立東金病院で女性外来を担当するようになり、最初に線維筋痛症と診断し、その後見事に立ち直られた患者さんを2回にわたって紹介します。

 

39歳、女性です。

主訴:全身の痛み、疲労感、むくみ

既往歴:小学6年の体育の授業(マット運動)で頸椎むちうち症となり、2カ月入院している

現病歴:第一子出産後から体調がすぐれず、疲れやすかったが、第二子の出産後は、調子の悪さはピークとなり、生理の前になると全身の痛みが強くなり、非常に疲れやすく、心身ともに落ち込みがひどい。両手のむくみ、しびれがある。右手第3~5指に力がはいらない。また、食事内容、運動には気をつけているにもかかわらず、生理前にイライラが昂じ、異常な過食が来るため、この1年間で10kg体重が増えた。2001年の4月からは疲労がたまると咳がでる。2002年3月からは花粉症と蕁麻疹が始まった。

家族歴:夫とは別居、離婚訴訟中、7歳男児、3歳女児を引き取り、実家の両親(父74歳、母70歳)と同居中。

生活歴:仕事はしていない。生活費は夫からもらっている。

 

診断名は線維筋痛症、月経前症候群、せき喘息、花粉症、蕁麻疹。

 

この頃の線維筋痛症の診断には、米国リュウマチ学会(1990)の診断基準が用いられており、次の①と②の両方の基準を満たし、広範囲の疼痛が3ケ月以上続いているときに線維筋痛症と診断されました。

 

①広範囲にわたる身体の疼痛:身体左側または右側全体にわたる疼痛、腰より上または下全体にわたる疼痛、さらに体軸部分の疼痛(頸椎部、前胸部、胸椎部、あるいは腰椎部)の全てが存在するときに広範囲とみなす。

 

②触診によって、18ケ所の特徴的な圧痛点のうち少なくとも11ケ所以上に疼痛を有する。

現在は、日本線維筋痛症学会から出された「線維筋痛症診療ガイドライン2013年」に則って診断が行われています。

 

次回は初診から現在にいたる経過についてお話しいたします。

 

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