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2018.10.24

「漢方専門医」について

山形県立中央病院 糖尿病・内分泌内科 医長 鈴木 恵綾先生の投稿です。

 

 

山形さくらんぼ

 

多彩な症状の患者さんが受診される女性外来では、「漢方薬」が非常に大きな役割を果たします。

 

もちろん西洋薬も用いますが、たくさんの西洋薬を飲んでもカバーしきれない症状が、1剤の漢方薬ですっかり良くなることも珍しくはありません。

そのため、女性外来に携わる医療者にとって、漢方医学の知識の取得は必須です。

今回のコラムでは、女性外来診療と切っても切り離せない漢方診療、その中の漢方専門医制度について、記したいと思います。

 

「漢方専門医」は、日本東洋医学会が認定する資格です。20189月現在、日本全国で2148名の漢方専門医が認定されています。

日本東洋医学会のホームページによると、「漢方専門医とは、西洋医学を十分に習得し、内科、外科をはじめ小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻科、精神科など西洋医学の専門分野を持った上で、漢方医学についても習得した医師です。」とされています。

 

他の領域の専門医と同様に、漢方専門医の受験資格を得るためには、規定の条件を満たす必要があります。

当然のことながら、医師免許は必須です。

その上で、内科や外科、産婦人科といった自分の基本領域の認定医、あるいは専門医の資格を有することが大前提となります。

さらに、3年以上継続して東洋医学会会員であること、学会や論文提出などで、所定の単位数を取得することが必要です。

 

そして、「学会が定める研修施設で3年以上の東洋医学の臨床研修に修練を積んだ者」が、専門医の第一歩、受験資格を得ることができるのです。

この資格を得た後に、経験した50症例の一覧と、10症例の臨床報を提出し、毎年1回の認定試験に合格すると、「漢方専門医」として認定されます。

 

数々の必要条件の中で、「研修施設での臨床研修」は、最も重要、かつ、必要不可欠な期間ではないかと考えます。

漢方診療には、脈診や腹診といった独自の診察方法があり、個人での勉強には限度があります。

漢方指導医の元で、直接指導を受けられる事は、非常に貴重な経験です。

しかしながら研修施設は限られており、専門医を目指す者の多くは、多忙な日常診療をこなしながら、他院に赴いて研修を受けています。

 

私も、山形県立中央病院で高血圧・内分泌の診療を行いながら、漢方指導医の先生の個人医院で臨床研修中です。

患者さんとの距離が近い、地域に根づいた医院での研修は、総合病院での診療とは異なる点が多く、新鮮です。

診療の多くは、日常会話から始まります。

何気ない会話から、体調はもちろん、睡眠や食事の状態を聞き出すのです。

 

「睡眠」といっても、ただ眠られるかどうかではなく、「何時に寝てる?ちゃんと早寝をしているか?」まで聞く。

食事も同様、どんなものを食べているまで伺います。

そして、診察。血圧を測る時の手台が横に広がったような脈診専用の台に両手を置いていただき、脈を診て、舌をみて、腹診を行います。

特に脈診の研修は、非常にためになります。

教科書を読んだだけではイメージしにくい具体的な脈の所見を、実際に感じ取ります。これが難しい。

 

それでも、多くの患者さんの脈を診せていただくと、少しずつわかってくるのです。「これが◯脈か!」と、毎回、目から鱗の研修です。

そして、症状、診察所見から、その患者さんに最も必要な漢方を考えていく。

全く同じ処方になる患者さんはなく、それがまた、面白いのです。

 

研修を行う中で、漢方専門医の資格を取ることはもちろん重要ですが、それ以上に、資格を取るまでの過程の中で学ぶことの意義を感じている今日この頃です。

出会った一例一例を大切に、精進したいと思います。

 

興味のある先生方、ぜひ一緒に「漢方専門医」を目指しましょう!

 

山形県立中央病院 糖尿病・内分泌内科 

医長 鈴木 恵綾

http://www.ypch.gr.jp/department/diabetes/index.html

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