天野理事長ブログ&スケジュール

2018.04.26

心躍る「芸大受験生を支えた診察」

磯部内科医院 院長 伊吹 恵里先生の投稿です。

青空と音符

 

皆様、こんにちは。名古屋市東区にある磯部内科医院の伊吹と申します。

 

このコラムが掲載される頃には年度が変わり、桜から緑萌ゆる季節に移り、日本中で皆様の新生活が始動していることと存じます。

 

父の内科医院を継承するため、長年勤務した大学を辞して1年半ほど経ったつい先日のことです。

 

「大学受験を控えているが、秋ごろから咳が止まらず、すっかり声が枯れてしまい、色々な市販薬を試したものの一向に良くならないのでなんとか治してほしい。」

という高校3年生のお嬢様がお母様を伴って私のクリニックを受診されました。

 

受験するのは超難関の某国立大学音楽学部声楽科で、一次試験(順調に進めば四次試験まであるとのこと)を数日後に控えているというタイミングでした。

 

何故、この大切なときに、数ある医療機関の中でしかも耳鼻咽喉科でもない当院を選んで受診してくださったのかがよくわかりませんでしたが、それまで内服されていたOTC薬が漢方中心であったので、おそらく、当院が漢方内科も標榜していたことが受診の動機であったのでしょう。

 

「うわ、専門外なのに責任重大過ぎる」

と、気後れしそうになりましたが、「なんとか試験日までにのどの調子を元に戻したい。」という患者さん親子の切実な願いがひしひしと伝わってきましたので、「受けて立とうじゃありませんか。」と柄にもなく無謀な男気を出して、ありったけの知恵を絞り、この患者さんの今の状態に合いそうな、そしてちゃんと治りそうな漢方薬と西洋薬とをまじえた私渾身の東洋・西洋ハイブリッド・オーダーメイド処方を考え、あとはただ祈るのみでした。

 

それから、約3週間後、いつものように外来診療をしていたら、電子カルテの受付患者リスト画面にその方のお名前が上がってきました。

結果がどうなったのか大変気になっていたのですが、そのお嬢さまの気持ちを傷つけないように、受験の話には触れないでおこうと思いつつ、彼女を診察室に呼び入れたところ、お母様とともに診察室に入ってこられ、「のどの調子はあれから二日くらいで良くなって、○○藝大受かりました!!」とお二人揃って満面の笑顔で声を弾ませて報告をしてくださいました。

 

なんと嬉しいことでしょう。

医者冥利に尽きる、と心から思えた瞬間でした。私もスタッフも大喜びで思わず小躍りしてしまいました。

 

診察室を後にされた際、「舞台映えしそうなお顔立ちの方なので、オペラに出たらさぞ素敵でしょうね。」とうちのスタッフが言っていましたが、実にそうなのです。

色白で「佐藤しのぶさん2世」とも言えそうな華やいだ雰囲気を内に秘め、明るい若さに満ち満ちていらっしゃったので、本当に将来が楽しみです。

 

想えば、天野惠子先生にNAHW関連の漢方の勉強会の機会をたくさん作っていただき、そこで、耐えがたく悲しいことでしたが一昨年鬼籍に入られた才能溢れる木下優子先生に諸々の漢方薬について幾度も楽しいご指南を受け、「一人の人を丸ごと受け止めて癒そうとする漢方治療」について理解を深めさせていただいたことが今回の私の幸福な体験の礎になっているのだと思います。

 

そんな天野先生と木下先生、そして一緒に学ぶ時間を共有させていただいた方々には心から感謝の気持ちでいっぱいです。

 

これからも自分の引き出しをひとつずつ増やしていきながら、様々なアプローチから手仕事で人を癒すことのできる「職人気質の医師」であり続けられるよう、日々精進してまいりたいと思っております。

 

 

磯部内科医院 院長

HP: http://www.isobenaika.com/

愛知医科大学 客員教授

伊吹 恵里

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