天野理事長ブログ&スケジュール

2017.07.12

ミャンマーへの旅⑧(医療事情)

天野惠子理事長の投稿です。

ミャンマー8-3 ミャンマー8-2 ミャンマー8-1

(1枚目はヤンゴンの母子医療センターの写真。小さくてボロボロの施設である。)

 

33日(金曜日)午前7時停泊地から出発。9Myanaung(ヤンゴン)に上陸。

 

ヤンゴンに近づくにつれ、街中の人の往来も増え、市場の規模は大きくなり、品物も豊富になっていく。ヤンゴンでは、1980年代に欧州人によって建てられたと思われる西洋風の家が目抜き通りにあり、その1階が商店として使われていた。

 

えっと驚いたのが、ホンダをはじめとする高そうなバイクを並べた販売店。ミャンマーでは、とにかくどこへいっても若者はバイクで走っているが(但し、ヤンゴンではバイクが禁止されている)、道路事情は昭和10年~20年代の日本にそっくり。ほとんどの道路が未だ舗装されておらず、もうもうと砂ぼこりを上げながら、マスクもせずに走り回っている姿に、「気管支喘息や呼吸器系の疾患になりやすいだろうな」と思わずにいられない。

 

ヤンゴンではじめて公立の医療施設(総合病院と母子センター)を垣間見る機会があった。

総合病院は年中無休・無料で、24時間診てもらえる。一番患者が多いのは年の瀬から新年にかけてで、その理由は飲酒運転による事故との説明。帰国してからミャンマーの医療事情について調べた。

 

下記の記載は主として参考文献(厚生労働省2015年海外情勢報告)からの概略。

 

【ミャンマーの医療事情】

2014年の国勢調査による国内人口は、5,142万人(男性48.2%、女性51.8%)

人口の年齢構成は、1064歳の人口が総人口に占める割合は」、2015年の78.2%をピークに減少に転じている。

疾病構造は、「5歳未満児の死亡率」「妊産婦死亡率」「感染症の有病率」が高いなどの開発途上国型の疾病構造を有しているほか、「生活習慣病」や社会経済の発展に伴う「外傷」なども高い割合を占めるなど先進国と似た側面も有している。

 

国民全体に対する社会保障制度は存在せず、労働者を対象とする社会保障法が2012年に改正され、制度拡充が行われたが、その加入率は全国民の1%にも満たないほか、同法に基づく制度の一部は未実施となっている。

 

因みにミャンマーの平均寿命(WHO世界保健統計2016年版)は66.6歳(男性64.6歳、女性68.5歳)。

 

20125大主要疾病原因:損傷(10.0%)、妊娠および分娩そのほかの合併症(6.9%)、単胎自然分娩(6.0%)、感染症と推定される下痢症、胃腸炎(5.8%)、そのほかのウイルス感染(3.8%)20125大死亡原因:脳卒中(12.7%)、下気道感染症(9.2%)、虚血性心疾患(6.8%)、結核(5.8%)、慢性閉塞性肺疾患(4.4%

 

医療機関:

保健医療サービスは、公的保健医療施設を主に設計されているが、公的医療機関の数は十分であるとは言えないことから、2007年に民間保健医療法が制定され、民間保健医療施設の位置づけが明確にされた後、民間の医療機関が拡大している。

2013年の公的病院数は1056、民間の医療機関については201012月の時点で、87総合病院、16特定機能病院、2,891総合クリニック、192特殊クリニックとなっている。

2012年に新外国投資法が成立し、外国資本による病院は、現地企業あるいは政府との合弁で設立することが可能となり、ヤンゴンを中心に新たな病院が増え始めている。

 

保健医療人材:

2013年の報告では、医師数31,542人(公的医療施設に13,099人、民間医療施設に18,443人)、人口1万人当たり6.12(日本では2014年の時点で、人口1万人あたり24.5)。看護師は29,532人、人口1万人当たり5.74人(日本では2014年の時点で、人口1万人あたり110)。人口当たりの医師数、看護師数については、依然として少ない状況で、病院以外の保健医療施設には医師を配置することが出来ず、助産師や国家資格を持たないボランティアの補助助産師が地域保健医療を支えざるを得ない。

看護師数が医師数を下回っているのは、単に看護婦養成機関が整備されていないためで、現在、保健省は看護師養成大学や看護学校を増やすべく努力をしている。

 

保健医療の負担:

医療費負担は、イギリスの国民保険サービスであるナショナル・ヘルス・サービスを受け継ぎ、政府の一般税金収入によるものとしてきたが、税金による公費負担のみでは、増加する医療費に対応できなくなってきたため、基本的に無料だった医療費に1994年から薬剤費用の自己負担制度が導入され、その後も検査、手術など徐々に有料化が進んでいる。

 

こうやって統計から見て見ると、やはりミャンマーの医療状況は未だ悲惨としか言いようがない。

まさに、日本の昭和10年~20年代の状況である。

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