2017.02.07
石灰沈着性頚長筋腱炎
天野惠子理事長の投稿です。
NAHWのホームページでお知らせしましたように、1月14日、文京区男女平等センターで、第20回赤松良子賞贈呈式および記念シンポジウムが開催されました。
会場は満員、補助椅子を出しても足りないほどの参加者で、中には英国や米国から駆けつけてこられた方もいらっしゃいました。
実は受賞者の一人である堂本暁子さんは、1月9日に突然の首の痛みのため、順天堂医院へ緊急入院されており、贈呈式、シンポジウムでの講演を終えた時点で、会場の方々からの割れんばかりの拍手の中、病院のほうへお戻りになられました。
9日の朝、突然の頚部痛のため、首が動かせない状態となり、順天堂医院を受診。総合内科では診断がつかず、翌日、整形外科医の診察で、「順天堂病院でも1年に1回くらいしかお目にかからないけれど、CT、MRI所見から見て石灰沈着性頚長筋腱炎に間違いない」とあっさりと診断がついたとのこと。カロナールが投与され、首の痛みは引き、14日の授賞式に間に合いました。
石灰沈着性頚長筋腱炎は、結晶誘発性関節炎で、言ってみれば「首の五十肩」。
結晶誘発性関節炎の仲間には、下記のような種類があります。
1.尿酸ナトリウムが沈着する痛風(第1中足趾節関節に好発)
2.ピロリン酸カルシュウムが沈着する偽痛風(膝関節、足関節、手関節、肩関節に好発)
3.主にハイドロキシアパタイト(塩基性リン酸カルシュウム)が関節周囲の軟部組織、特に腱に沈着する石灰性筋炎もしくは石灰性関節周囲炎(肩関節、股関節、肘関節、手関節、膝関節の順に多い)
石灰沈着性頚長筋腱炎は1960年代に報告され、発症機序としては、頚長筋腱の乏血・過使用による組織の変性により同部へ石灰が沈着→その被膜が破綻して周囲組織への石灰細粒の播種・沈着→それらが吸収される過程で炎症が惹起され疼痛や軟部組織の腫脹を引き起こすと考えられています。
好発年齢は20~60歳、性差は無く(女性に多いとする報告もあり)、急性の頚部痛、頚部運動制限、嚥下時痛、発熱を見ます。検査では、白血球の増加、CRPの高値などの炎症反応のほか、CTでは第1~2頚椎前面の頚長筋付着部に石灰化像、MRIでは咽頭後壁の頚長筋に一致する部位の腫脹や浮腫液体貯留を認めます。
鑑別診断としては、咽後膿瘍、化膿性脊椎炎、髄膜炎があげられ、通常は鎮痛剤などの対症療法で1~2週間で症状は消失しますが、鑑別上問題となる化膿性脊椎炎や咽後膿瘍が完全に否定できない時には抗生剤やステロイドが用いられることがあります。