天野理事長ブログ&スケジュール

2016.12.21

微小血管狭心症・・・・?

社会医療法人社団カレスサッポロ 北光記念クリニック所長 佐久間一郎先生の投稿です。

 

最近、NHKの医学番組で紹介されたためか、「微小血管狭心症(MVA)」ではないかという更年期女性の来院が増える様になった。

 

思い返せば、更年期女性の「胸痛」については、今から20ほど年前に天野先生(注:当団体理事長)が日本心臓病学会で、「高校時代の同級生で胸痛を訴える女性が多い」と報告され、当時循環器内科ではNIHDavid CannonMVAの概念を提唱しており、各施設の心カテ班で日本人での病態の検討が進められた。

 

私も北大循内の心カテ班に依頼し、「胸痛を訴えるもののCAGが正常である女性」に大がかりな検査を依頼した。

使用するカテーテルは3本、1本目は冠動脈へのアセチルコリンやアデノシン、ニトログリセリンを投与するため、2本目は右心房に開口する冠静脈洞内に挿入し、虚血時に冠静脈血で上昇する乳酸値を測定するため、3本目は心拍数増加により乳酸値が増加するか否かをみるためのページングカテである。

 

その結果「MVA」には、

・ペーシングにより発症するタイプ

microvascular stealで発症するタイプ

microvascular spasmが起こるタイプ

があると分かった。

しかし、薬物が効くのは最後のタイプにCa拮抗薬を投与した場合であり、ニトロもKチャネル拮抗薬も、ARBも、HRTも効果がない症例が多かった。

 

そのうち「微小血管狭心症」では患者は死なないので無治療でOK、そもそも「MVA」を提唱したCannonが、「イミプラミンが効く(多分疼痛閾値が上昇するのだろう)ので、本症はうつ病が本態である」とその存在を否定してしまった。

 

先週、「貴院には女性外来はあるのか」と電話して来院した55歳の女性も、他院でのCAGは正常でヘルベッサーRが効くので「MVA」であるとは思うが、当院でのホルターECGで発作時の心電図は正常であり、日本で唯一人の内科医で日本女性医学学会「女性ヘルスケア専門医」である私に、自分が受けているHRTへの不信を長々と訴え、また運動負荷試験を予約する際に「16時以降にして欲しい、それまでは身体が動かない」と言うなど、パーソナリティ障害がありそうだ。

Cannonもそのような患者に多数遭遇し、上記の結論に達したのではないかと思わせる症例であった。

 

社会医療法人 社団カレスサッポロ

北光記念クリニック 所長 佐久間一郎

http://www.hokko.or.jp/clinic/outline/aisatsu.html

ハートを描く男性医師

 

 

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