天野理事長ブログ&スケジュール

2016.06.28

「夢の薬」高額な抗がん剤の登場③―薬価はどの様に決められる?

天野惠子理事長の投稿です。

 

「夢の薬」高額な抗がん剤の登場①と②で、患者の免疫力を利用してがんを抑える日本発の治療薬「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」についてお話しました。

 

この薬は、まず悪性黒色腫(メラノーマ)向けに承認され、続いて非小細胞肺がん向けの保険適用が認められました。

ニボルマブは、平成269月の新医薬品一覧表によれば、点滴用の薬剤が20mg150,200円、100mg729,849円です。ニボルマブの用法・容量に従って体重60kgの患者さんに3mg/kg(体重)2週間間隔で点滴すると、1ケ月に使用するニボルマブの費用は270万円になります。

もし、この薬を1年間使うと3240万円となります。

 

非小細胞肺がんで、この薬の対象となる「手術不能で、ほかの抗がん剤を使って効果がなかった患者さん」は、1年間で約3万人。其のうち3割は遺伝子変異が原因で別の薬が有効、副作用などもあり本当に使える人は、約5割の15,000人と言われています。投与期間も臨床試験の結果では平均6ケ月です。もしこの薬が15000人に使用されるとすると、15,000x270万円x6ケ月=2430億円。命を助けるためには、お金をいとわないとしてきた医療者の意識が、ぐっと変わって、皆保険制度が崩壊するのではという危機意識を持ち始めています。

 

いったい、薬価はどの様に決まるのでしょうか。

薬価の決め方には類似薬効比較方式と原価計算方式があります。

前者は既存の類似薬を元に算定するもので、効果の違いによって点数が付加され値段が決まります。

全くの新薬の場合は、原価計算方式で、製薬会社側が開発にかけた費用+営業利益+流通

経費を積み上げて、予想販売数で割るとおおよその薬価になります。ニボルマブは、最初の薬価収載が、患者数が少ない(年間470)メラノーマでしたので、高く設定されたと思われます。

 

国としては、2016年度の薬価制度改革で「特例拡大再算定」について新しいルールを導入しました。当初の予定より想定患者数が増えた場合には、薬価の引き下げの対象となり、「薬剤の年間売上高が、当初予測の1.5倍以上かつ1000億円を超える」ケースでは最大25%、「当初予測の1.3倍以上かつ1500億円を超える」のケースでは最大50%の引き下げをそれぞれ行うとしました。

 

小野薬品工業では今年度の売り上げ予測を1260億円としていますので、2018年度の見直し時には、この制度での再算定の対象品目となります。また、厚生労働省は新たな薬価引き下げ策も打ち出しており、薬価に「費用対効果」の評価を導入することが2016年度から試行されています。2018年度にはオプジーボも対象となります。その後も2年ごとに薬価の改訂があり、下がっていくと思われます。

 

この1剤で国を滅ぼすと言うことはなさそうですが、一日でも早く、「オプジーボはどの様な患者に有効か」が、投薬以前にわかる日が来ることを願っています。

円グラフ

 

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