2016.06.15
「夢の薬」高額な抗がん剤の登場 ②
天野惠子理事長の投稿です。
がんに対する免疫療法の有効性は、ずっと「眉唾もの」だと言われてきました。しかし、最近、本当にがんに効く免疫療法が登場し、がん治療は手術、化学療法、放射線についで第4の手段を手に入れることになりました。
免疫チェックポイント阻害剤オプジーボは、2014年7月に根治切除の不能なメラノーマに対して保険適応となりました。ついで、2015年12月には、切除不能な肺がん(非小細胞肺がん)に対する使用が保険適応となりました。米国では、既に腎臓がんに対して承認されており、リンパがん,頭頚部がんなどあらゆるがんに有効であることも明らかになりつつあります。
しかし、ここで医師の側から、この薬を肺がん治療に用いた際にかかる費用について懸念の声が上がりました。
肺がんの患者は、メラノーマ(10万人1人:患者予測はピーク時でも470人)の患者に比べて二桁多く(年間13万人)、且つ、日本人の肺がんの85%は非小細胞肺がんですので、今後多くの肺がんの患者さんにオプジーボが使用されると予想されます。
日本赤十字社医療センター化学療法科部長の國頭英夫先生(専門は胸部腫瘍、臨床試験方法論)の試算によれば、体重60kgの患者が1年間オプジーボを使うと、3460万円かかり、対象となり得る肺がん患者5万人全員に投与すれば、年に約1.7兆円。
現在の日本の国民医療費のうち、薬剤費は約10兆円ですので、いきなり2割近く薬剤費が跳ね上がることになります。
又、喉から手が出るほど「効くものなら使いたい」と切望している患者の側からも、不安な声が上がっています。ここまで薬が高くなると、所得に応じて自己負担を一定額に抑える国の高額療養費制度を使っても、家計に与える影響が大きく、経済的な事情から薬の使用を継続できなくなるのではないかと心配しているのです。
オプジーボが画期的な抗がん剤であることは間違いない事実ですが、其の有効率はメラノーマで3割、肺がんでは2割とも言われています。さらに、残念なことに「どのような人に有効で、どのような人に無効か」を事前に明らかにする手立てが現在のところないのが悩ましいところです。