天野理事長ブログ&スケジュール

2016.06.07

在宅診療のおくりもの

今回は、社会医療法人財団大樹会 総合病院回生病院 女性漢方外来/ペインクリニックならびに、在宅診療敬二郎クリニック 野萱純子先生の投稿です。

 

在宅診療と女性医療

 

女性外来診療の傍ら、週一回在宅診療クリニックに勤めるようになって3年が経過しました。

8割以上が女性という状況は、女性が長生きされることの証であると同時に、健康寿命とのずれの長さを反映する現実でもあります。男性9年、女性13年と言われるずれをできる限り短くする、これは女性医療が掲げる目標の一つであると思います。

 

認知症、脳血管障害、骨折転倒、関節疾患とならぶ在宅診療の対象疾患を見ると、改めて女性外来で更年期以降の女性の健康を見守ることの重要性を感じます。

今在宅医療を受けている80才代以上の女性が更年期を過ごした時期と比較して、循環系障害、骨粗鬆については優れた予防医療が可能となってきています。この恩恵を広く行き渡らせることは、これからの高齢者医療を変えてゆく可能性を持つでしょう。

またその一方、現在の養生を忘れた食生活と運動量低下は、未来の在宅医療世代の躓きの石となるに違いありません。

 

うどん県の問題

 

うどん県香川は、糖尿病では常に有病率全国トップを争っています。

適当に過疎なので車も使いやすいし、おいしいうどん屋さんがどこにでもあり、最近は粉もの文化の延長でおいしいパン屋さんも増えてしまい、克己心を奮い起こしてもつい肥満してゆくという方が多いのです。

 

食事の注意や運動のすすめという当たり前のことを、いかに患者さんの生活に組み込むか、やる気を維持するか頭を悩ませています。

時間もやる気もない女性にもとりくんでいただきやすい運動に、顔面筋運動があります。美容目的で広く知られるようになっていますが、慢性痛にも効果があり診療に取り入れてきました。脳皮質のホムンクルスの大きな顔を考えても、ここを刺激することは能率のよい脳の運動になると考えられます。

 

顔面筋運動による脳の血流の多さ、高い糖消費率は肥満予防にも効果があるに違いありません。シワをつくらないよう等尺運動をするのに注意が必要ですが、続けていただくと確実に健康度がアップすると感じております。

 

寝たきりであること

 

人生の終わりの時期を診させていただくことを繰り返すにつれ、自分自身もその中に撚り合わされ流れている時間の感覚がリアルになってきました。

 

目の前に寝たきりとなられている方々が、かつて生まれたての赤ん坊であり、幼い子供であり、働き盛りの母であったこと、それぞれの時代を生きてきたことはまったく当たり前のことなのに、自分も同じなのだとはなかなか思わなかったのです。

そう感じたとき、日常にまぎれて見えずにいる時間を感じた気がします。

寝たきりとなった方がまとっている時間の深さが、ご本人はまったくその気持ちもないためにかえってはっきりと送ってくれるメッセージ、自然にありがたいなと思えてしまい、感傷的ではないかと居心地悪くも感じ、この感覚についてはもっとよく考えてみなくてはと思っています。

 

哲学や宗教はまだ手掛かりが少ないので、日本語や日本文学史をみてみようと思い、高校時代に参考書でお世話になった小西甚一先生の著作を読んでいます(言葉にご興味のある向きには、大変刺激的な著作が多いのでオススメです)

  

 

在宅診療は、女性医療の重要性、高齢者医療の難しさを痛感させて、なまけものの私に勉強を続ける気持ちを与えてくれています。

その上に、もしかしたらまだわからない何かを加速しているのかもしれません。しばらくはこの流れにのって進んでみようと思っている毎日です。

 

社会医療法人財団 大樹会

総合病院 回生病院 女性漢方外来/ペインクリニック

http://www.kaisei.or.jp/

在宅診療敬二郎クリニック 

http://www.healthcarenet.jp/clinic-kjr/

医師 野萱純子

さぬきうどん2

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