2016.06.21
「生涯未婚率」上昇について思うこと。
みなさんは「生涯未婚率」という統計上の言葉をご存知でしょうか?
未婚率、であれば結婚していない男女の割合としてとてもわかりやすいのですが、生涯未婚率、となると初耳という方もおられるかもしれません。
生涯未婚率は、一生涯未婚の人の割合、というわけではありません。
ある測定時点で「50歳で1度も結婚経験がない人の割合」を計算した数値です。簡単に表現すると「一生涯独身である可能性が高い人の割合」という統計上の指標です。
では、日本の生涯未婚率はどのようになっているのでしょうか。
5年に1度の国勢調査に基づいて計算されるため、直近のデータは2010年のデータになりますが、男性は20.14%、女性は10.61%となっています。
つまり、日本人の男性の5人に1人、女性の10人に1人が生涯未婚のままだということです。
この生涯未婚率は、特に男性で急上昇してきています。
1980年には2.60%だったのが、1990年には5.57%、2000年には12.57%、そして2010年が20.14%と30年前の10倍にもなっています。
女性は1980年に4.45%で、今の半分程度ですから、そこまで割合が増えてはいません。
生涯未婚率を見る限り、男性の生涯未婚率がどんどん増えている状態です。
50歳男女のそれぞれの人口はそこまで変わらない(2010年国勢調査でともに77万人程度)とすると、女性生涯未婚者の倍の割合の生涯未婚男性がいるということは、複数回結婚している男性が増える一方で、全くしない男性の割合が増えたということでしょう。
1度も結婚しない男性割合が日本で増えたことは、あまり手放しで容認していいことではないように思います。
ここからは私見です。
警察庁が発表しているこんなデータがあります。
「ストーカーの加害者の状況」というデータです。男性には女性よりも強い支配欲があるという特性ためか、ストーカー加害者の実に86%(平成27年)が男性です。
以下、平成27年の最新データについてみてみます。
もともとストーカー加害について圧倒的な割合と件数を誇る男性ですが、その人数がこの5年間でさらに50.5%も増加(18,819件ヘ)しています。
そして、加害者の年齢で最も多いのが30代(23.5%)、次に40代(20.7%)、20代(18.6%)と続きます。
加害者の動機で圧倒的なトップは「好意の感情」(15,419件)です。
好意が受け入れられなかったことへの恨みという理由は4,336件で、圧倒的に一方的な好意だけからのストーカー行為ということがわかります。
被害者と加害者との関係は(元)恋人が49.6%にものぼります。
ここから見えてくるのは、結婚適齢期と言われる年代の男性の(元)恋人への「異常な執着と支配欲の増加」そして「執着と愛情のはき違え」が増加してきているということです。女性からすると恐怖でしかありませんね。
男性と女性のアンバランスな生涯未婚率の増加。
歪んだ好意を原因としたストーカー加害者・被害者の増加。
この2つの社会現象が全く無関係には私には思えないのです。
ここ数年、警察庁はストーカー加害者に警告・逮捕といった罰を与えることだけでなく、メンタルヘルスの視点から支援するといったアプローチも開始しています。
被害者の家族から、加害者を罰する行為だけでは加害者の歪んだ思考が変わるわけではないため、被害の再発は防止できない、という運動があったことも背景です。
メンタルヘルス支援によってストーカーを行ってしまう思考の持ち主の男性の思考が変化し、結果として行動も変わるならば、これはある意味、新手の「婚活支援」といえるかもしれませんね。
ストーカー行為は決して許されませんが、誰かを一生懸命に好きになる心理自体は、全く責められることではないのです。
いずれにしても、この状態が進行することなく、1組でも幸せなカップルが日本に増えることを願ってやみません。
㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部
JADP上級心理カウンセラー 天野 馨南子