2014.11.04
微小血管狭心症について知りましょう
今日は更年期前後によく見られる微小血管狭心症について書きます。
今日は更年期前後によく見られる微小血管狭心症について書きます。
私が、更年期前後の女性の狭心症について初めて関心を持ったのは40歳でした。高校時代の友人が毎日起こる狭心症様の症状を訴えて、東大病院へやってきました。いつものとおり、安静心電図、運動負荷心電図、ホルター心電図、核医学検査とやりましたが、虚血があるとの証拠を捕まえることはできませんでした。差し上げたニトロは頭が痛くなるだけで、胸痛にはまったく効きませんでした。
そのころ、彼女は某シンクタンクの総合職として非常に忙しい毎日を過ごしていましたので、生活を変えるよう指導しました。夕方から通っていたビジネススクールを休学することで、胸痛はそのときには軽減しました。不思議な胸痛があるものだと関心を持ったのです。
そのころ、このような胸痛は「シンドロームX」とか、「心臓神経症」と呼ばれていました。
しかし、その後米国でこのような胸痛の少なくとも一部は心臓の筋肉内を走る微小血管の異常によって起こることが証明され、「微小血管狭心症」と呼ばれるようになりました。その特徴は、下記のとおりです。
1. 更年期前後の女性10人に1人の割合で起こる。
2. 胸痛発作は3ケ月に一度ほどの割合で起こることが多いが、毎日、毎週起こる人もある。
3. 胸痛は安静時に起こることが多く、就寝時(ことに夜明け)に起こることも多い。
4. 胸痛は多くは5分以内であるが数時間~一日にわたって起こる人もいる。
5. 胸痛で発症する以外に、歯の痛み、背部痛、あごの痛み、腹痛、腕の痛みなどとして発症することもある。
6. 発作は、心身の疲労、不眠、冷えなどが誘因となる。
7. ニトログリセリンが無効のことが多い。
最近では、この女性に特有な胸痛について医師の認知も広がりつつありますが、いまだ、患者さんが私の書いた記事などを持参しても「こんな狭心症はしらない」といわれる循環器科医があとをたちません。
2010年に日本循環器学会より発表された「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」には、微小血管狭心症がきちんと書き込まれていますので、それを参考にしていただくように医師へ伝えることも一つの方法かと思います。