天野理事長ブログ&スケジュール

2014.10.27

「女性の虚血性心疾患の特徴」

9月25日から28日まで仙台で開かれた第62回日本心臓病学会では、東北大学大学院医学系研究科 循環器内科 下川教授の肝いりで、10の特別企画が用意されました。

9月25日から28日まで仙台で開かれた第62回日本心臓病学会では、東北大学大学院医学系研究科 循環器内科 下川教授の肝いりで、10の特別企画が用意されました。

 

私と松田昌子・山口大学名誉教授が座長を務めた「臨床心臓病学における性差医学・医療の実践」は初日(25日)の午前8時半から10時に開催されました。

 

初日の朝早くで金曜日ということもあり、参加者は思いのほか少なく、残念でしたが、6人の演者の話は従来の発表に比べ、一段とこの分野での研究が進んでいることを実感させるものでした。

 

演者1.大阪市立大学 病理病態学 上田真喜子教授

「虚血性心疾患患者における酸化・抗酸化バランスー性差による違いについて」

 

演者2.千葉大学薬学研究院 上野光一名誉教授 「薬物動態と薬効の性差」

 

演者3.日本医科大学千葉北総病院 循環器内科 清野精彦教授

「女性の虚血性心疾患の特徴と対策」

 

演者4.日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 心臓血管外科 高梨秀一郎部長

「女性のCABG-off pump症例での検討」

演者5.佐賀大学医学部 循環器内科 野出孝一教授 

「心不全における性差医療」

 

演者6.大分大学医学部 循環器内科・臨床検査部 中川幹子講師 

「不整脈診療に性差を活かす」

 

この中でも、清野先生が話された「女性の虚血性心疾患の特徴」は、すでに医師の間では周知の事実ですが、ブログ読者の皆さんにも是非、知っていただきたいと思います。

 

1)女性では虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)を男性に比べて約10年遅れて発症します。発症年齢が高いこともあり、女性の患者では, 高血圧, 高脂血症, 肥満などの危険因子保有頻度が高いです。

 

2)男性では心筋梗塞として発症することが多いのに対して, 女性では非典型的症状を主訴とする狭心症として発症することが多い。

 

3)胸痛に対する知覚, ストレスに対する反応などに差異がある。女性では、狭心症の際、胸痛としてではなく、歯痛、腹痛、背部痛、腕の痛みなど非典型的な痛みとして発症することが往々にしてあります。

 

4)そのため、ほかの病気と間違えられ、発症から受診・治療までの時間が遅延することが多いようです。

 

5)受診時心電図に変化を認めない症例が多い→更年期前後によく見られる微小血管狭心症では、心電図に変化のないほうが普通です。最近では、いわゆる正常冠動脈造影女性症例における微小血管狭心症、 冠攣縮性狭心症に関する知見が注目されています。

 

6)検査法の診断精度に関するリミテーションが多い→運動負荷心電図では十分に負荷がかけられない、核医学検査では乳房が邪魔をするなどの事実があります。

 

7)冠動脈造影では器質的狭窄病変の頻度が少ない→最近は、有効性と安全性を考えて、女性に対しては冠動脈CTを思考することが多いです。

 

8)血液生化学バイオマーカー(心筋傷害マーカー, 心筋ストレスマーカーなど)の血中動態にも性差があります。

 

ハート風船

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